旅の楽しみというより醍醐味ってなんでしょう。
 それは普段目にすることのない風景をみたり、自分の日常とは違った価値感に
 にふれる非日常ではないでしょか。
 それは、珊瑚の海に戯れる熱帯魚だっだり、ビックリするような物価の安さかも
 しれません。

 ですが、いわゆるカルチャーショックのようなものを旅で感じることが、旅の大き
 な醍醐味だとおもいます。

 私がもっともショックをうけた国はインドです。
 インドは非常にカルチャーショックの強い国として有名で、そういうのを知った上
 で、異文化体験をしたくて出かける人も多くいます。
 私の場合、最初の海外旅行の目的地ははケニヤでした。日本からの直行便は
 なく、インドのボンペイで乗り継ぎ、一泊をしました。私にとって最初の海外が、
 たまたまトランジットで滞在したインドだったのです。
 このとき目的地であるケニアについては、いろいろ調べたりしてますが、インドに
 ついては、別に興味があるわけでもなく、生水はのんではいけないといった程度
 の知識しかなく、ショッキングな国だということも全然しりませんでした。

 飛行機がボンペイについたのは夜の10時ぐらいだったとおもいます。
 初めて訪れた海外で目にした光景、雰囲気はあまりにもショッキングでした。
 空港の雰囲気も異様ですが、空港からホテルに向かう道路の端に延々と人が
 ねている風景に驚愕しました。
 ケニアの首都ナイロビに向かう飛行機は翌日午後だったので、市内観光を少し
 しましたが、数時間の間に見たものは、それまでの人生で見たもの全て以上で
 した。
 ナイロビに向かう飛行機で、”えっ まだケニアがあったの!!”といった感
 じで、おなかいっぱい、もうなんにもはいらない状態でした。

 インドには物乞いが多いという話はご存知の方も多いでしょうが、聞くのと実際
 に体験するのは、全く違います。
 実際に手を目の前にのばされて、物乞いされましが、言葉もなにもでません。
 ただ唖然とするばかりです。
 日本にも路上生活者や物乞いをする人はいますが、それはきわめて特別な人、
 はっきりいうと一般社をドロップアウトした人だとおもいます。
 しかし、インドでは路上で生活し、堂々と物乞いをし、子供をそだて、食事をする
 のが、ごく普通の生き方のひとつとして存在するのです
 そういう人ばかりでなく、日本にきたってかなりの金持ちという人もいっぱいい
 ます(街でそういう人もみかけます)。
 ですが、たとえばわずか1万ほどのお金がないために、病院にいくとこができず、
 すごく苦しいおもいをしたり、死んでしまうような生き方が、特別不幸な生き方で
 はなく存在するのです。

 日本人一般の感覚は、そういう生き方はしたくない。みじめだ。だとおもいます。
 そこまでして生きるくらいなら、死んだほうがいい。と考えるかもしれません。
 少なくとも、知り合いにそういう姿を見られたい。とはおもわないでしょう。

 そうじゃないんです。
 あの風景で感じた驚愕はなんだったのか、ずっとわかりませんでした。
 最近になってやっとこういうことかなとわかってきました。

 生きることは素晴らしい 
 貧しくとも、物乞い以外に生活の手段がなくとも、医者にかかることができず、
 安易に死を迎えなくてはならないとしても

 今を生きているということは何事にもかえられない事実なのです。
 それが生きる基本なのではないでしょうか?
 あの時見た風景、衝撃が、私の人生に、ときおり大きな影響を与えています。